就職決まった

無能であることを自称する情報系博士課程の学生として,後輩や似たような状況の方の参考になればと思って,いままでの就職活動をまとめてみます.なお,本文の想定読者は,自分が博士課程の学生として無能であることを二年間で深く自覚した上で,アカデミアに残るのはやめようと思った人です.

就職活動概要

  • 12月:某大手人材紹介業者にコンタクトを取る
  • 1月:某超大手通信企業をはじめとして,企業の研究所を数ヶ所見学に行く.
  • 2月:ベンチャー受けて玉砕
  • 3月:某超大手通信企業玉砕
  • 4月:大手研究所数社受けて玉砕
  • 5月:大手ソフトウェア開発センター内々定

当初の予定

  • 大手企業の研究所:志望度高め.どっちかというと研究と開発の中間ぽいことができそうかなぁと思った.
  • 優良ベンチャー:博士であることを評価してくれそうなベンチャー企業があれば.
  • アカデミア:ありません.結局自力で良い研究テーマを出せるような人材ではなかったということは自覚しました.
  • 国立研究所(産総研NICTなど):アカデミアとほぼ同義じゃん.
  • 「うちのボスと仲のいい某巨大企業」:うちの弟がそこの関連会社なのであんまり行く気はなかった.

就職活動の実際

  • 12月中旬:博士の就活について述べたWebページを眺めつつ,新卒博士人材紹介サービスに登録する.するとメールがきて履歴書と研究概要を送れといわれたので,それまでの研究内容を記入して送った.
  • 1月上旬:人材サービスの担当者と面談.そこで,「なんで博士課程に行ったのか,というあたりが甘いですね.今までの話を聞いていると,正直修士で出ててよかったんじゃないですか?」とか言われた.そんなことはわかってた.あと「年収350程度,修士と同じ扱いで妥協しろ」とか言われた.頭では分かっていたが,感情的に嫌だった.
  • 1月中旬〜下旬:企業の研究所を見学.結果的には5社(全部大手)しか見なかった.これは完全に大手病であったと言える.研究所見学は基本的に面白くなかったが,まれに面白いものもあった,程度.この頃はかなりベンチャーに惹かれていた.
  • 2月上旬:人材サービスの紹介してきたベンチャーに面接に行ってみた.初面接だった&今から思えば全然スタンダードな面接ではなかったので完全に玉砕.というか研究のプレゼンもさせてくれなかった.「バイトする?」とかフラグは立ってた気もしたが,「5月くらいからなら」とかフラグクラッシャーしてきた.ここでフラグを折らなければ次に行けたかも知れなかったのに(笑).
  • 2月〜3月:修士向けの推薦を前提とした学内説明会のラッシュ.実は博士課程でもこれに参加してリクルータを捕まえておくと良いことがある.ということに気づいたのは全てが終わった後だった.おかげでSONYとかPanasonicとかそうそうたる企業を悠然と見逃した.
  • 3月某日:テストセンター受験.「博士の就職活動にそんなものはなくて,基本一本釣り」と聞かされていたが,そんなのは太古の昔の話だったらしい.いくら自分が無能でも国語算数ができなくなるほど無能ではなかったので,多少対策を練ったらできるようにはなった.
  • 3月某日:某超大手通信事業者Nの面接.二次マッチングまで進んだが,即座に祈られる.祈られた理由の半分はプレゼン.残り半分は最後に第一志望でないかのように取られてしまった事.家に帰り着く前に結果が来てた.ショックで半日寝込む.
  • 4月上旬〜中旬:某大手電機メーカーN研究所の「マッチングを前提とした見学会」(という名の面接)ラッシュ.全部祈られ「当社の求める人材像とは異なる」,「スキル領域が異なる」,心がへし折れる.やけ酒のジンライムに溺れる.
  • 4月中旬:某大手電機メーカー研究所に落ちたのだが,リクルータにちょっと毛色の違う研究所?を紹介された.
  • 4月下旬:その研究所?でどういうわけかマッチングが成立する.自分では落ちる面接だと思っていただけに不思議すぎた.
  • 5月某日:最終面接と筆記試験.
  • 本日:内々定の電話.非常に遅かったのでそろそろ他社にエントリーしようかなと思ってたところでしたよ.ところで自由応募で選考を進めたはずなのに,内々定受諾かどうか訊かれていない気がするんですが・・・.まあ二次面接時点で辞退禁止とはリクルータに聞いているし,向こう的には推薦の選考にねじ込んだ形だからまあどう考えても受諾なんでしょうねぇ.

反省点およびこれから就活する博士課程へのアドバイスのようなもの

  1. 玉数を絞るな:  僕が就職活動に苦労した理由は,多分「ちゃんと志望できない会社は選考に進まない」というポリシーで動いていたからだと思う.これでIBMとか日立とか切ってるから苦労したんだろうなぁ.という感じだ.ちゃんと大手病なら大手病らしく三菱SHARPソニー松下IBM日立富士通*1とか始めに玉数に入れておけばまた違う展開が見られたかもしれなかった.あと学内のOB説明会や見学会は見逃さずに動いたほうが残弾を増やすことができる.やっぱ上手く行ってた人たちは2月中に10発くらい持ってたと思った.
  2. ベンチャーに変な夢想を抱くな:  ちゃんと報酬にベンチャーリスクを加味している優良なベンチャー企業は受けてみようかと思ったが,そのようなベンチャーはそんなにないことがわかった.ベンチャーは基本的に金がないので,報酬として払う金も用意できるかどうか怪しいところが多い*2.しかしベンチャー側も研究開発のできる人材が欲しいならサイボウズみたいに「情報系博士課程出身者募集中,年収480万以上」とかしっかりベンチャーリスクを加味した報酬を出してやればいいのになぁ,と思った*3
  3. 研究所を受けるなら研究したいというオーラを出せ:  上から聞いてた話では「あまり研究がやりたいと固執するのも良くない」という感じだった.しかし,博士の就活を上手くやった同期の話では,「研究の話だけしてれば好感触でトントン拍子」だったらしい.自分は上から聞いた話をそれなりに信頼していたので「そりゃねーだろ?」と思った.しかし,よく考えると通った面接は研究メインの面接で,それ以外に余計なことを言った面接は結構落ちている.逆に自分の研究の話をしっかり理解させればよい.物理化学はどうかわからんが,コンピュータサイエンスなら相手もある程度は話を理解できる「面接官」という名の技術者を当ててくるので,ちゃんと研究内容を説明した面接のほうが受かる.あとあまりに簡単に説明しようとすると墓穴を掘るので注意.これを誤解していたので僕は数回墓穴を掘った.研究所に欲しいのは研究のできるソルジャーであって,ただのソルジャーは要らない.
  4. 指導教員のご高配を期待するな,もしくは最大限に利用しろ:  論文の締め切りが就職活動の事情を鑑みてくれることはない.僕の場合,毎月論文の締め切りを突っ込まれているという状況になっていた.何かおかしい,というか正直就職諦めさせようとさせているんじゃなかろうかと思ってしまうくらいのDoS攻撃だった.なお,うちのボスはそれなりの企業とコネがあるらしく,人材紹介的なことはやってもらえることになっていた.だがしかし,どういうわけか同期は皆自力で普通に修士と同じような就職活動をしたようだ.……まあ一応みんな決まったからいいんだけど,今後のために誰か一人はこの裏口を試しておいて欲しかったと後輩には思われていると思う.
  5. 人材紹介会社は自分のスタイル次第:  大企業病の自分には人材紹介会社の紹介してくる会社の多くは面白くなかった.というか基本的に毎朝SPAMっぽく送られてくるので途中からどうでもよくなってしまった.こっちの要望もあまり反映されているようには感じなかった.僕は「貴方達にはベンチャーを紹介してくれることしか期待していない」と言ったのに,なんか大企業の子会社系列を紹介されても困るんだよ,という意味では担当者との意思疎通は上手くいかなかったのかなぁ…….

以上ぐだぐだな文章でしたが,どこかの誰かの参考になればと思います.適宜質問等あれば答えられる範囲でコメント欄でもプライベートでも受け付けます.

*1:つまり大手病といいつつこんなに志望しなかった大手が残っているということにはなったw

*2:これは人材紹介会社を通している都合上,年収低めに言っておかないと人材紹介会社にがっぽりふんだくられるからかもしれない.

*3:ちなみに僕は,アメリカのベンチャーからスタートアップボーナス25,000ドル+Google並報酬を出すからこないか的なお誘いをもらったのだけど,英語に自信がなかったのでシカトした.・・・乗っておけばよかったかしら?w